超趣味的蹴球観戦記 Vol.5 [2005.11.05]

     ― 平成17年度 第84回全国高校サッカー選手権大会 埼玉県大会

                                    準々決勝 川越南 VS 正智深谷 ―


特に母体やパイプを持たないラトルズは選手の出身校もバラバラ、西武台、埼玉栄、農三、所沢北、飯能南、向陽、聖望、城西川越…etcと西部地区の高校を中心に1人〜3人くらいずつ満遍なく加入しているんですが、なぜか川越南だけ6人の大所帯。
川越南高校は、県立校ながら高田先生→山崎先生と指導者にも恵まれ、私立高校や南部の有力校にも引けをとらない好チームをコンスタントに作ってきます。選手も粒揃い。
西部地区では、西武台、武蔵越生、飯能南などの強豪校の下の第2グループに位置するダークホース的存在なんですが、長い間総体予選・選手権予選ともに、どうしてもベスト8の壁を敗れませんでした。

そして今年のチーム。新人戦、総体予選では目立った成績を残せなかったんですが、選手権予選に入ってから好調。一次予選は川越高校との川越ダービーを制し、二次予選リーグでは昨年ベスト4の伊奈総合、今年関東大会に出場した志木、さらに久喜北陽も同居する激戦ブロックを2位で通過し16校で争われる決勝トーナメントへ進出。トーナメント1回戦は越谷南を接戦の末PKで降しベスト8、過去の最高成績に並びました。
今年こそジンクスを破れるか!? 気になる準々決勝の相手は今年の総体予選で県3位の強豪正智深谷。1回戦は同じ総体予選で県4位の市立浦和をPKで破っています。強そうだ。
おし!卒業生が6人もいることだし、これはラトルズキャプテンとして応援行くしかないでしょ(部外者だけど知ったこっちゃない)。
行きましたよ、トボトボ徒歩と電車で。今回の観戦記は選手権予選準々決勝 川越南 VS 正智深谷。


川越南応援団 気合入ってます

選手入場 左が川越南

こちらは正智深谷の応援団

会場は埼玉サッカーの聖地・大宮公園サッカー場。1964年の東京オリンピックの会場として作られた、日本初のサッカー専用スタジアムです。今では2001年に完成した最新鋭の巨大サッカー専用スタジアム、さいたまスタジアム2002の影にすっかり隠れてしまっていますが。
確かに施設は古い、トイレも少ないし売店もない、どこもかしこもコンクリート剥き出しで華やかさはありませんが、一昔前の世代の人間にとっては、ここ大宮サッカー場は憧れであり夢だったんです。

当日は気持ちの良い秋晴れ、歩いていると汗ばむくらいの陽気です。氷川神社の参道をテクテク歩き、名物の鳥居をくぐって大宮公園へ。駅から少し遠いけど、この雰囲気がいいんだね。
スタジアムへ到着、パチンコ屋の換金所のような窓口でチケットを購入。1000円。
そういえばこの観戦記も5戦目になりますが、有料の試合は初めてですね。階段手前で高校生がボランティアでチケットの「もぎり」をしているんですが、慣れてないのか買ったばかりのチケットがビリビリに…「て、てめえ…頑張れよ…」
階段を上ったコンコース(というよりも踊り場?)で屋台のおばちゃんから焼きそばを買い、いざスタンドへ。


この日は審判員の研修会があったらしく、
県リーグでもお馴染みのレフェリーの方も
何人かスーツ姿で観戦してました


CKのこぼれ球からあわやゴールの大ピンチ


終了直前、和氣選手がFKで起死回生の
同点ゴールを決め、勝負は延長へ


延長直前、ベンチ前で体を休める川越南
の選手達 みんな笑顔です
キックオフまで20分ほど時間があったんですが、すでに両校応援団はヒートアップ。
大宮サッカー場が鳴り物禁止になったのか?両校の応援がこういうスタイルなのか?分かりませんが、ともにブラバンなしで歌とコールでの応援なんですが、もの凄いボリュームです。代表サポもJサポも、一人ひとりがこのくらい声出したらスタジアムはとんでもないことになりますね。
川越南応援団の対面で臨場感も味わえて、ピッチもよく見渡せるメインスタンドの上部で観戦することにしました。

顔見知りの審判員の方と談笑したり、焼きそばに箸が付いてなくてアタフタしてるうちに試合開始。最初のチャンスは川越南。3分に左からのCK、得点には至らないものの4分に16番松村選手が左足でゴール右へシュート、6分には右CKといい流れを掴みます。

システムは正智深谷が4-4-2のダイヤモンド。対する川越南も同じ布陣のようですが、2トップというより9番上城選手を頂点にパートナーの16番松村選手が1.5列目に位置する形、両サイドハーフもワイドに開いて位置も高く攻撃的な布陣です。

開始直後は浮き足立っていた正智深谷も10番井上選手を中心とした攻撃で対抗。
そして13分、早くも試合が動きます。ボールをキャッチした川越南の2年生GK坂本選手が素早く攻撃につなげようと7番和氣選手の足元へスローイング。しかし瞬時に囲まれてしまい危険な位置で相手ボールに、そのままドリブルで持ち込まれ正智深谷13番新井選手に見事なミドルシュートを決められてしまいました。

オーケーオーケー!まだまだ時間あるよー!
応援団席も怯まず声援を送り続けています。選手達もそれに応えようと頑張ってはいるんですが、どうもリズムが悪い。ポストプレーのうまい9番上城選手に一度当ててから組み立てようとするんですが、ハイボールではマーカーである正智深谷の長身DF荒木選手に完敗、足元で受けても後ろに落とす意識が強すぎてどんどんポジションを下げてしまいます。もう少し相手ゴールを意識してプレーするか、もしくはパートナーである16番松村選手が逆に裏へ飛び出すようなプレーができれば展開も変わってくるのですが、村松選手はどちらかというとトップの下でプレーするのが得意な選手のようです。前線の位置が低い為チーム全体が下がってしまい、結局ロングボールを放り込み相手にはね返される悪循環で、川越南としては非常に苦しい展開。
幸いにも正智深谷の攻撃陣もそれほど精度が高いわけではなかったため、追加点を奪われることなく前半は0-1で終了。

川越南、後半開始と同時に動いてきました。ボランチの19番関選手に代えてFWに10番古賀選手を投入。玉突きで16番松村選手がトップ下へ下がって、前半時折優れた技術と展開力を見せていた7番和氣選手がボランチへ、完全なダイヤモンドの形。

リードしている正智深谷は守りに入らず積極的に川越南ゴールを襲います。
5分にCKのこぼれ球からシュート、11分には長距離のFKをゴール前で3番の長身荒木選手が頭で合わせますが僅かにポストをかすめ枠の外。

対する川越南、前半停滞していた攻撃陣に喝を入れるかのように、交代で入った10番古賀選手が精力的な動きを見せます。裏のスペースに飛び出したり、ドリブルで果敢に挑んだり正智DFを揺さぶります。それに引っ張られるように9番上城選手もゴールに近い位置でプレーするようになると、質の高いポストプレーも相手に脅威を与えるように。すると中盤でスペースを与えられた16番松村選手と7番和氣選手の二人が攻撃に絡む回数も増えるようになりました。
中盤で主導権を握ったことでラインも高くなり、数人が連動してダイレクトで流れるようなパス回しを見せるなど、前半に比べれば随分良い攻撃を繰り出せるようになりましたが、最後のゴールがなかなか奪えません。
35分にはCKのこぼれ球から決定的なチャンスを掴みますが和氣選手のボレーは惜しくもバーの上を通過。そうこうしてるうちに時計の針は進み、このまま終わるだろうと誰もが思い始めた試合終了1分前、川越南がゴール正面約20mの位置でFKを獲得。
ラストチャンス、外せば引退。
このプレッシャーのかかるキックを7番和氣選手が完璧なコースへ蹴り込み同点!
勝負は10分ハーフの延長戦へ持ち込まれます。

こうなればもう川越南のペースです。選手もベンチも応援席もイケイケ。延長前半2分、10番古賀選手のロングスローを14番青木選手が頭でゴール前へ流し、走りこんだ9番上城選手が左足で素晴らしいシュートを叩き込み逆転!狂喜乱舞の川越南応援席。感動しました。
残りの時間は10番古賀選手を中心に高校生とは思えない老獪な時間稼ぎ。念願の準決勝へ駒を進めました。おめでとう!

川越南の準決勝の相手は、プリンスリーグを主戦場とする優勝候補筆頭の浦和東。
厳しい戦いが予想されますが、ここまで来たら失うものは何もない!
精一杯自分達の力を出し切って、最高の試合をしてほしいと思います。頑張れ川南!!

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