超趣味的蹴球観戦記 Vol.7 [2008.11.24]

― 平成20年度 県リーグ昇降格決定戦 3部2位チームプレーオフ ―

久しぶりの観戦記になりました。前回のレポートが平成17年の関東社会人サッカー大会だったので、
実に3年ぶりということになります。皆様ご無沙汰しておりました。

さて、Jリーグを頂点とした日本サッカーのピラミッド。この時期は各カテゴリーのリーグ戦も大方終了し、
来季のリーグ編成に向けた昇格戦や、入れ替え戦などが盛んに行われています。
今回はそんな昇格戦の中から、県リーグ2部下位チームとの入れ替え戦への挑戦権を賭けた戦い、
「県3部2位チームプレーオフ」の模様をお伝えします。

東西南北4つに分かれた県リーグ3部の各リーグ2位4チームが出場するこのプレーオフ。
昨年までは県3部優勝4チームに加え、このプレーオフで勝利した2チームの計6チームが県2部に
昇格することになっていましたが、昨年行われたリーグ再編成に伴いこの大会のレギュレーションも変更され、
優勝4チームは従来通り自動昇格ですが、2位の4チームに関してはプレーオフに勝利した後、
県2部A、Bブロックそれぞれの8位と入れ替え戦を行い、それに勝利すれば県2部に昇格ということになりました。

県3部2位チームプレーオフ、対戦カードは以下の通り。

WAST入間(県3部西部地区2位) - 美里イレブンスターズ(県3部北部地区2位)
久喜FC(県3部東部地区2位) - 与野八王子(県3部南部地区2位)


2001年の県3部創設後、FC西武台、飯能セボジータス、狭山アゼィリアFC、坂戸シティーFCの4チームを県1部に送り込み、
さらに北坂戸SC、川高蹴球会、そして我らが狭山ラトルズなど好チームを続々と輩出し、徐々に県リーグの勢力図を変えつつある
西部地区からはWAST入間が出場。
2002年に県3部昇格後、強力な攻撃陣を武器に毎年上位争いに加わるも最後の詰めを欠き、これまで一度も2位以内に
入ることができませんでしたが、今季は優勝したFC3DEPにこそ水を開けられるものの、県2部復帰を目論む
都幾クラブ、鳩山SCを抑え、過去最高順位で初のプレーオフ進出。

対するは北部地区2位の美里イレブンスターズ。優勝した立正大学FC'76と共に一年での県2部復帰が有力と見られていた
江南ブロッコリーズSAを最終節で交わし、こちらも初のプレーオフ進出。

東部地区からは3年ぶりの県2部復帰を目指していた東春'72、2年ぶりの復帰を目指していた久喜エブリディの
2チームを僅差で抑えた久喜FC

そしてこの日出場4チームの中で一番の注目、今年のクラブ選手権埼玉県予選を制し、その勢いのまま関東大会でも
3位に入り全国大会まで駒を進めた与野八王子
県3部南部地区では最終節まで首位をキープするも、最後の最後で優勝した与野FCHとの直接対決に破れてしまい、
得失点差で惜しくも優勝を逃してプレーオフへ。

ラトルズも過去に2度(2003年、2005年)出場を経験した熱い戦いに、今回は、
↑ いつもゴロゴロしてばかりいるコイツと
↑ ハイキングウォーキングの鈴木Q太郎みたいなコイツと
↑ わたくし
…の3名で行って参りました。会場は熊谷スポーツ文化公園補助陸上競技場。
「高速で行け」とか「やっぱり下道で行け」とか一貫性のない指示を出し続けるナビゲーションに翻弄されつつ、
第一試合 WAST入間 VS 美里イレブンスターズ のキックオフ時間ぎりぎりに到着。
3人とも慌てて車を飛び降り、それぞれ折りたたみ椅子を片手にズカズカとピッチ脇に侵入。

WAST入間のゴールを守るのは、鈴木Q太郎の前所属チームTEENS小江戸川越で正(性?)GKを務めていた
「教祖」こと三田選手。到着直後に物陰に隠れて「三田っちーー!(教祖のあだ名)」と叫ぶと試合そっちのけで
キョロキョロ辺りを見回しておりました。滑稽でした。

 (※)TEENS小江戸川越…県3部初年度の2001年から6年連続で奇跡の残留劇を演じた伝説のお笑いチーム。
                  2007年に遂に県3部から降格し解散。

WAST入間のゲームを観るのは県3部時代直接対決した2006年8月以来2年以上ぶり。
この時はいつも派手な打ち合いを演じるラトルズ VS WAST らしからぬ締まりのある好ゲームの末、
ラトルズが0-1で敗れています。

ちなみにリーグ戦での対戦成績は、

2002年 ラトルズ 2-4 WAST
2003年 ラトルズ 3-2 WAST
2004年 ラトルズが県2部のため対戦なし
2005年 ラトルズ 6-3 WAST
2006年 ラトルズ 0-1 WAST
2007年 ラトルズが県2部のため対戦なし
2008年 ラトルズが県2部のため対戦なし

という訳で2勝2敗と全くの五分。

2003年以降県2部に通算3年、県3部で優勝1回と2位2回のラトルズに対し総合成績では劣るものの、
WASTもラトルズと全く遜色のないチームだということが上記の対戦成績からも窺えると思います。
もしかすると来季のライバルになるかもしれない彼らの成長を確認すべく、かなり気合を入れて
(昼飯&お茶持参で)観戦して参りました。

24番吉田選手、11番小畦選手を中心に破壊力抜群の攻撃力を誇るWASTがゲームを支配すると思いきや、
硬さからか彼ららしからぬ拙攻の連続で序盤から全く五分の展開。
WASTの特徴である中盤からのリズミカルなパス交換は影を潜め、下から無理に長いボールを蹴り込むのみ。
むしろ美里の方がシンプルな攻撃から形を作るなど、WASTの圧勝を予想してた私達にとっては意外な展開で
ゲームが進みます。

これといって変化の無い試合展開からか私たち3人の私語も徐々に増え、「いつもゴロゴロしている黄色い男」が
彼女に高額なプレゼントを要求されて困り果てているなどと、どうでもいい話をしつつ試合はほとんどチラ見状態。
そして本部役員席に川口SCの富岡監督を見つけたのでイチャモンをつけに(前日に行われた県2部最終戦で
ラトルズと勝ち点で並んでいた大里FCに川口SCが引き分けた為、ラトルズが4位に転落してしまった)
行ってる間になんとWASTのオウンゴールで美里イレブンスターズが先制。

練習でも見られないようなきれいなボレーを自分のゴールに突き刺してしまったのは、
こちらも元TEENS小江戸川越で今年からWASTに移籍した斉藤ユキオ選手。
馬鹿め、「教祖」の守るゴールになんてマネを…。
今頃「教祖」にポアされて短い一生を終えてしまっていないか、すごく心配です。
生きていたら連絡ください。

リズムのつかめないWASTが先制点を失い非常に嫌な雰囲気が立ち込めますが、5分後にチャンスをつかむと
右からの折り返しを11番小畦選手が滑り込みながらゴール左隅に流し込み同点。
これで勢いに乗るかと思われたWASTでしたが、リズムをつかめないままその後も受身の展開で1-1のまま前半終了。


 接触プレーで痛む「教祖」
 相手FKに備える凛々しい「教祖」


ハーフタイムで良いミーティングができたんでしょうか、後半から徐々に本来の力を発揮し始めたWASTがゲームを支配。
11番小畦選手を中心にしっかりとボールを動かし、美里の運動量が極端に落ちたことにも助けられ後半は一方的な展開。
しかし数多くあった決定機を決めることができずスコアが膠着したまま時間が過ぎ去るのみ。

案の定私たちの私語も加速し、「いつもゴロゴロしている黄色い男」がプレゼントした高額なアクセサリー類を、彼女がことごとく
紛失して困り果てているとか、本当にどうでもいい話をしていると試合の残り時間も10分。
そろそろPK戦もちらつき始めたこの時間に突如訪れたWASTのチャンスで、8番菊池選手が豪快に蹴り込み遂に勝ち越し。
意外なほどあっさり戦意を喪失した美里に対しさらにPKで1点を加え、WASTが3-1で勝利。
県2部8位チームとの入れ替え戦に駒を進めました。


 後半、相手陣内へ攻め込むWAST入間


試合に先立って行われた抽選で、WASTの入れ替え戦の対戦相手は県2部Aブロック8位の埼玉オーステンに決定しました。
これに勝てば、WASTは悲願の県2部昇格ということになります。
ただ、今季の埼玉オーステンの試合を一試合も見たことが無いので何ともいえませんが、この日のような内容ではどうでしょうか…。
厳しい言い方をするようですが、あまりにも運動量が少なく、終始中盤が間延びした状態。
交代メンバーも2人とギリギリのメンバー構成で、正直今回は力の数段劣る相手に助けられた形になりました。
入れ替え戦までの2週間でいかに修正できるか、もちろん急に走れるチームにすることはできませんから、
まずは守備からしっかりゲームを作り、カウンターからチャンスを窺うような展開になるでしょうか。
幸い吉田選手を筆頭に、技術とスピードを兼ね揃えた好選手が前線にいるので、少ない枚数でも十分相手ゴールを
陥れることができるはずです。
攻めるべき時間と守るべき時間をチーム全体で意識統一を図り、しっかりとしたゲームプランを持って戦えば
十分勝てるチャンスはあるはずですから、好結果を期待したいと思います。


さて、第2試合の 久喜FC VS 与野八王子。
冒頭に書いたように今年のクラブ選手権埼玉県大会を制した与野八王子、観るのは初めてですが人づてに
非常に良いチームだと聞いていたので、今回かなり注目しておりました。

試合はその与野八王子が序盤から攻勢、非常にテクニックのある選手が多く、連動性のある動きでボールも
よく動きます。そして何よりチーム全体が非常に雰囲気を持っている。
それもそのはず、現在のアヴェントゥーラ川口に移行した時の旧与野SCの選手達が主体らしく、
さらにアヴェントゥーラからの移籍組や、フリースタイルの球舞のメンバー達も登録してるとかしてないとか。
左アウトサイドの果敢なオーバーラップから何度も好クロスが放り込まれるなど、完全に試合を支配します。

すると前半の早い時間に、昨年までアヴェントゥーラに所属していた8番強瀬選手の素晴らしいミドルが決まり、
与野八王子が先制。
その後も押し気味に試合を進めていましたが、前半の中盤辺りから久喜FCが徐々に盛り返すと、
与野八王子の動きにキレがなくなり試合は一進一退の攻防。
久喜FCは10番内川選手の積極的なプレーを中心に、際どいシーンを何度か作りますが得点までは至らず、
与野八王子1点リードのまま後半へ進みます。

負けてはいるものの悪くないゲームを展開している久喜FCは、ハーフタイムでも落ち着き払った雰囲気。
中盤以降流れが悪かった与野八王子としては、一度リセットして序盤のリズムを取り戻したいところでしたが、
後半先に得点を奪ったのは久喜FC。右サイドからのグラウンダーのクロスを10番内川選手が滑り込みながら
決めて同点。
一気に盛り上がる久喜に対し焦る与野、試合はどちらに転んでもおかしくない展開になりました。

しかし双方チャンスを得ながらスコアが動かず、後半も半ばに差し掛かると地力に勝る与野八王子が押し始め、
さらに次々とフレッシュな選手を投入して疲れの見え始めた久喜FCに対し攻勢をかけます。
粘り強く戦った久喜でしたが、ここで遂に力尽きて勝ち越し点を献上。
さらに続けて追加点を許し、あっという間に2点のビハインド。

質の高いリザーブメンバーを次々と的確に投入し、層の厚さも見せつける与野八王子に対し、
ビハインドを背負ってもなかなか攻撃のカードを切らないベンチに対しピッチ内の選手が不満をぶつける久喜FC。
さらにここまで前線で好プレーを続けてきた10番内川選手が2枚目のイエローで退場してしまい万事休す。
終了間際に与野八王子がさらに1点を追加し、結局4-1で勝利、県2部との入れ替え戦に駒を進めました。

勝利した与野八王子の入れ替え戦の相手は県2部Bブロック8位の深谷クラブ。
クラブ選手権でも対戦しており、この時は1-0で与野八王子が深谷クラブを降しています。
深谷クラブにとっては残留を賭けると共にこの時の雪辱を期す戦いになります。
数年前、県3部から県1部まで駆け上がった全盛期の深谷クラブでしたら何の問題もないでしょうが、
県1部から降格した今季はどういう訳か開幕から絶不調で下位に低迷するまさかの結果。
ラトルズとしては定期的に練習試合などでお世話になり、目標とするクラブの一つであった深谷クラブには
何としても頑張って残留を果たしてもらいたいところですが、今回の試合を見る限り難しい戦いになることは間違いなさそうです。

入れ替え戦は12月7日。

埼玉オーステンSC(県2部Aブロック8位) VS WAST入間(県3部西部地区2位)
深谷クラブ(県2部Bブロック8位) VS 与野八王子(県3部南部地区2位)

もしかすると今季県リーグ関係の入れ替え戦の中で一番熱い戦いになるかもしれません。



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